自転車の交通違反に対する新たな取り締まり制度が、2026年4月から導入されることが発表され、多くの市民の間で懸念と不安が広がっています。この制度では、自転車が歩道を走行することに対して、6000円の罰金が科せられることになります。特に、歩道を利用することが多い子供を乗せた親や高齢者にとって、この新たな法律は厳しい現実を突きつけるものとなっています。
警察庁が募集したパブリックコメントには、わずか1ヶ月で6000件近い意見が寄せられ、その大半が「現在の日本の道路環境では、自転車が安全に車道を走ることは不可能だ」という切実な訴えでした。実際、自転車専用レーンは違法駐車車両で埋め尽くされていることが多く、これでは安全に走行することが難しいのが現状です。
警察庁は、「取り締まりは悪質で危険な行為に限る」との見解を示していますが、この方針には大きな矛盾が潜んでいます。警察が定義する「危険行為」には、時速7.5km以下での歩道通行が含まれていますが、一般的な自転車の速度は時速15kmから20kmであるため、ほぼ全ての自転車が理論上は取り締まりの対象となる可能性があります。このため、現場の警察官の裁量に基づく取り締まりが行われることになり、制度そのものが形骸化する恐れがあります。
専門家からは、このままでは運が悪い人だけが捕まる「スケープゴート」的な状況に終わり、本来の目的である交通安全の向上が達成されないのではないかとの懸念が表明されています。ネット上でも、「違反を基準にする前に、自転車専用レーンの整備を進めるべきだ」といった意見や、「この基準では結局、警察官の気分次第で罰金が科せられるのはおかしい」との反発が寄せられています。
また、自転車の安全な走行環境を整えるためには、インフラの改善が急務であるとの声も多く、特に大型トラックが通る車道での危険を訴える意見が目立ちます。欧州のように自転車専用道が整備されていない日本においては、現行の法律が逆に自転車利用者を危険にさらす結果になりかねません。
この新制度の導入に対する市民の反応は、厳しいものとなっており、実行可能な制度にするためには何が必要かという問いが浮かび上がっています。交通安全を確保するためには、個人の罰則だけでなく、全体的な道路行政の見直しが求められているといえるでしょう。