日本の基幹ロケットの役割をH2Aから引き継ぐH3は、打ち上げの低コスト化とともに国際競争力の確立が課題となる。関係者はH2A最終号機の打ち上げを終えた29日、日本の宇宙開発を長年担った主力ロケットの成功を喜び、H3へバトンをつなぐ決意と覚悟を新たにした。 【写真】〈美しい軌跡〉開聞岳上空に弧を描き、上昇するH2A50号機=29日午前1時33分から5分20秒間露光、南九州市頴娃町別府
機体はエンジンに着火すると、暗闇の中に白い光を放ち、ゆっくりと上昇した。プレスセンターでは、三菱重工業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関係者約10人が見守った。約16分後、打ち上げ成功を伝えるアナウンスが流れると、肩をたたき合ったり、握手をしたりして喜んだ。 「H2Aで得た技術と経験をH3に受け継ぎ、日本の宇宙輸送システムの向上を図る」。打ち上げ後の会見で、JAXAの山川宏理事長は力強く語った。 H2Aは気象衛星「ひまわり」をはじめ、多様な衛星や探査機を宇宙に運んだ。07年に三菱重工業が打ち上げ業務を担ってからは、民間や海外の衛星も輸送するようになった。 成功率98%は世界トップレベルを誇るが、打ち上げ費用の高さは課題の一つ。H3は主エンジンを補助する固体ロケットブースターなしの打ち上げで、費用をH2Aの半分の約50億円とする目標を掲げる。25年度中の打ち上げを予定するH3の6号機は、その新形態への挑戦となる。
国際的な打ち上げ市場は米スペースXの再利用型をはじめ、技術革新や価格破壊が進み、競争が激化する。三菱重工業の五十嵐巖部長は、低コスト化に加え、「打ち上げ回数の多さや複数の衛星相乗りなど、ユ-ザーが求める輸送サービスを提供し、H3を進化させることが必要だ」と気を引き締めた。