千葉ロッテは9日、佐々木朗希(23)の今オフのポスティングによるメジャー挑戦を容認することを発表した。佐々木は、ここ数年契約更改時にメジャー挑戦の意向を伝えていた。入団5年目を終えたばかりだが、球団は「5年間の総合的な判断として」その夢を応援することを決めたという。ただ25歳ルールの対象選手となるため契約金に制限が加えられ、ロッテへの譲渡金は最大でも3億円に満たない。巨人OBで、ロッテではGM、ヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗氏は、「ロッテは我儘に愛想が尽きたんだろう。日本はメジャーの踏み台じゃない。今のままじゃ行っても失敗する」と厳しい苦言を呈した。 【映像】これが左肩を亜っ打球した大谷の衝撃シーン。
千葉ロッテが佐々木のポスティングによるメジャー挑戦を認めた。その理由について、松本尚樹球団本部長は「入団した当初より本人からアメリカでプレーをしたいという夢を聞いておりました。今年までの5年間の総合的な判断として彼の想いを尊重することにしました」と説明。 佐々木も球団を通じて「入団してからこれまで継続的に将来的なMLB挑戦について耳を傾けていただき、今回こうして正式にポスティングを許可していただいた球団には感謝しかありません。マリーンズでの5年間はうまくいかなかったことも多かったですが、どんな時もチームメート、スタッフ、フロント、そしてファンの皆さまに支えられながら、野球だけに集中してここまで来ることができました」と感謝を伝えた上で、「一度しかない野球人生で後悔のないように、そして今回背中を押していただいた皆さまの期待に応えられるように、マイナー契約から這い上がって世界一の選手になれるよう頑張ります」とコメントした。 佐々木のメジャー挑戦の問題が表面化したのは、越年した昨年オフの契約更改。あと2年待てば「25歳ルール」による契約金の制限が解け、佐々木自身も、そして、譲渡金の入る球団も“ウインウイン”だったのだろうが、佐々木は1年でも早い渡米を求めた。契約はマイナーで、契約金は最大でも750万ドル(約11億4000万円)球団への譲渡金も187万5000ドル(約2億8000万円)に抑えられることになった。 SNS上では賛否も含めて様々な意見が飛び交っているが、1994年から2年間、ロッテで日本球界初となるGMを務めたことのある球団大御所の広岡氏は、今回の問題を一刀両断にした。 「ポスティングというルールがある以上これは仕方がない。球団が決めるわけだからな。ただもうロッテは佐々木の我儘にほとほと愛想が尽きたんだろう。あきらめたと言ってもいいのかもしれない。シーズン中も“あそこが痛い”、“ここが悪い”という佐々木にチームは振り回されていた。25歳ルール? 逆にあんな我儘な選手がいない方がチームは強くなるよ。1年でも早く出ていってもらったほうがいい」 一方でトップスターの相次ぐメジャー流出による空洞化の問題も露呈した。昨年だけでも、山本由伸がオリックスからドジャース、今永昇太が横浜DeNAからカブス、松井裕樹が楽天からパドレスに移籍した。松井以外の2人はFA権を得る前のポスティングだ。 「正直、悔しいし、悲しいな。どんどん日本の有能なスターがメジャーに出ていく。佐々木はわずか5年だろう。1年目は何もしてないので、実質は4年だ。何勝したんだ? 規定投球回数を投げたことがあるのか?日本はメジャーリーグの踏み台じゃない。球団は否定しているそうだが、私の個人的な憶測で言うが、入団時になんらかの裏の約束があったと思っている。最初からロッテに入らずメジャーに行けばよかったんだ。どんどんスターがメジャーへ出ていき、そして厳しい契約社会のメジャーでクビになりこっちに帰ってくる。青木(ヤクルト)とか活躍をした選手もいるが、松坂(ソフトバンク、中日、西武)みたいにほとんどの元メジャーリーガーは、高い給料だけをもらってろくに働きもしない。もう一度、コミッショナーが中心となり、球界全体でルールを見直すべきじゃないか」大谷翔平も佐々木と同じく5年でポスティングが認められてエンゼルスへ移籍した。当時も25歳ルールの対象となり、契約金は231万5000ドル(当時レートで約2億6000万円)だった。だが、大谷がメジャーに移籍する際には、ここまでの賛否は起きなかった。二刀流として活躍して、投手としては3年連続で2桁勝利をあげるなど、通算42勝利、打者としても通算48本塁打で、2016年には、優勝、日本一にも貢献した。この年、投手して10勝4敗、防御率は1.86、打者として打率.322、22本、67打点の成績を残している。 一方の佐々木は、大船渡高から2019年のドラフトでロッテ、日ハム、楽天、西武の4球団競合の上、ロッテに入団したが、1年目は体力作りに専念して1試合も投げず、今季は初の2桁勝利をマークし、10勝4敗、防御率2.35の数字を残した。だが「右上肢のコンディション不良」で6月13日から8月1日の西武戦で復帰するまで長期にわたり戦列を離れ、18試合登板に留まり、プロ5年で通算29勝。この間、チームは一度も優勝はなく、2022年には5位に終わり井口資仁監督が退任している。 2022年4月10日のオリックス戦で完全試合を達成し、13者連続三振の世界記録、1試合19奪三振の日本タイ記録を樹立するなど個人記録のインパクトを残したが、一度も規定投球回数にも届かず、チームの優勝に貢献できていなかったことが、ファンやプロ野球関係者の反応の違いにつながっていると見られる。 ただ対照的にメジャー球団や米国ファンの関心は凄まじい。ドジャースが大本命とされているが、契約金が安価のため全球団が獲得に乗り出すものと予想されている。 しかし、広岡氏はメジャーでの活躍については懐疑的だ。 「まあ失敗するよ。今のままじゃメジャーの中4日、中5日できっちりと回るローテーに入ればすぐに潰れるだろう。今の肉体じゃとても持たない。沢村賞を3度とった山本でさえ怪我したじゃないか。行ってみたら厳しさがわかるよ。メジャーは即戦力として日本人を獲得するわけだから育成の考えなんかない。彼が完全試合を達成したとき、凄いボールを投げていたし、どれだけの投手になるのかと期待していたが、あれから何も成長していない。鍛えていない。すぐにどこかが悪い、痛い、とか言って練習をしていないのだろう。厳しく鍛えてこなかったロッテにも問題はあるのだが、ここにも何か無理をさせられない約束事があったのかもしれない」広岡氏が指摘するようにオリックスで2021年、2022年と2年連続でリーグ最多となる26試合登板、193イニング以上を投げた山本でさえドジャースの1年目の今季右肩腱板損傷で6月から9月まで3か月チームを離脱した。ポストシーズンには間に合ったが、メジャーのボールや硬いマウンドなどの環境、そして毎試合ベンチに入り中4日、中5日でフル稼働する厳しいスケジュールに肉体が悲鳴をあげた。 山本だけでなく、クレイトン・カーショーやタイラー・グラスノーら故障者が続出したドジャースは、来季は日本流の6人ローテー制を採用し、投手を中6日で回すプランを検討しているそうだが、大事に扱われてきたロッテでさえ満足にローテーを守れなかった佐々木の故障発生の不安を広岡氏が危惧するのも無理はない。 ポスティング申請の締め切りは12月15日。交渉期間は米球団への通知から45日間となっている。 (文責・駒沢悟/フリーライター)