プロ野球の日本シリーズは29日夜、福岡市のみずほPayPayドームで第3戦が行われ、DeNAがソフトバンクに4対1で勝って、このシリーズ初勝利をあげ対戦成績を1勝2敗としました。
敗れたソフトバンクは2018年の日本シリーズ第3戦から続いていた最多連勝の記録が「14」で止まりました。DeNA 東克樹が復帰登板で7回1失点 チームに勝利もたらす
ことしの日本シリーズは、セ・リーグ3位からクライマックスシリーズを勝ち上がったDeNAと4年ぶりにパ・リーグを制したソフトバンクが7年ぶりに対戦し、横浜スタジアムで行われた第2戦までソフトバンクが2連勝し、今夜の第3戦は舞台をソフトバンクの本拠地、みずほPayPayドームに移して行われました。DeNAは1回、1番の桑原将志選手のツーベースヒットからチャンスを作り、3番の牧秀悟選手のショートゴロの間に得点して、このシリーズ初めて先制点を奪いました。
桑原将志 選手が好守
直後に同点に追いつかれましたが2回には、ソフトバンクの先頭、正木智也選手のセンター前への鋭い打球を桑原選手がダイビングキャッチしてチームをもり立てました。
DeNA 桑原将志 選手がHR
同点の5回には、先頭の桑原選手がこの回から登板したソフトバンクの2人目、大津亮介投手の甘く入った変化球を捉えて左中間にソロホームランを打って1点を勝ち越し、この回さらに1点を加えました。8回には8番の戸柱恭孝選手がタイムリーツーベースヒットを打ってリードを3点に広げました。
DeNA 東克樹 投手
投げては、クライマックスシリーズのファーストステージで左太ももの裏を肉離れして戦列を離れ、この試合が復帰登板となった先発の東克樹投手が、毎回ヒットを打たれましたが要所を締め、7回105球を投げ1失点の好投を見せました。
このままリードを守り切ったDeNAは4対1で勝ち、このシリーズ初勝利をあげ対戦成績を1勝2敗としました。
ソフトバンク スチュワート投手
一方、ソフトバンクは先発のスチュワート投手が4回1失点の内容でしたが、3つのフォアボールを与えるなどリズムを作ることができず、リリーフ陣も粘れませんでした。好調の打線も相手を上回る10本のヒットを打ちましたがチャンスであと一本が出ず、指名打者で先発復帰した近藤健介選手のタイムリーツーベースヒットによる1点にとどまりました。敗れたソフトバンクは2018年の日本シリーズ第3戦から続いていた最多連勝の記録が「14」で止まりました。
《監督・選手談話》DeNA 三浦監督「(次戦へ)全員が出し切る準備をする」
DeNAの三浦大輔監督は、けがからの復帰登板となった試合で毎回ヒットを打たれながらも7回1失点と好投した先発の東克樹投手について「たいしたもんだ。本人のリハビリや精神力もそうだし、トレーナーや周りのケアに支えられた中での、きょうの投球内容だったと思う。ランナーを出しながらも丁寧に慌てることなくアウトを積み重ねて、キャッチャーの戸柱恭孝選手とうまく配球しながら粘り強く投げたと思う」とたたえていました。また、1回にツーベースヒットを打って先制のホームを踏み、5回に勝ち越しのホームランを打った1番の桑原将志選手については「入り方が大事なところで1打席目に出塁して先制できたのは大きかったし、そのあとにもうひと押しできなかったところで、ホームランという形で勢いを付けてくれた。切り込み隊長として最高の働きをしてくれた」と話していました。第4戦以降に向けては「1つ勝ってもほっとすることなく、またあしたの試合に全員が集中して全員が出し切る準備をする」と気を引き締めていました。
DeNA 東克樹「足がちぎれてもいいという気持ちで」
左もも裏の肉離れから復帰し7回1失点と好投したDeNAの東克樹投手は「足がちぎれてもいいという気持ちでマウンドに上がった。ランナーは出したが粘り強く投げることができて要所も抑えられた」と振り返りました。そして3回の守備で、ファーストゴロの際に一塁ベースのカバーに走った場面については「再発するかもしれないという怖さはあったが、しっかり走れたので大丈夫なんだなって思えた」とほっとした様子でした。また、6回1アウト一塁で今宮選手をむかえた場面では東投手が主審に何かを訴えてプレーが中断され、球場のアナウンスで「投手が投げる間際の口笛はご遠慮ください」などと注意喚起がされました。東投手はこのシーンについて「この球場では指笛は禁止されていないのは知っているし、だめなことではないが投げる瞬間に大きい音を出しているように自分が感じたのでやめてほしいと伝えた。悪気はなかったかもしれないがタイミングを考えて欲しいし気になった」と説明しました。そして、ファイナルステージでは登板できなかったものの日本シリーズで勝ち投手になり「もどかしい気持ちはあったがようやく自分の出番と思ったし投げられる喜びを感じた。チームの期待に応えられてよかった」と充実した表情で話していました。
ソフトバンク 小久保監督「DeNA 東投手がすごかった」
敗れたソフトバンクの小久保裕紀監督は「短期決戦は敗因を振り返る意味がない。いいところはいっぱいあった」と明るい表情で話しました。その上で「先頭バッターが出塁できなかったので得点につながらなかった。DeNAの東投手がすごかった。連打を許さず、失点しない。エースだと思う」と試合を振り返りました。そして「尾形投手、オスナ投手、ヘルナンデス投手といった勝ちパターンのリリーフ陣をきょうは出さなかったので、勝てる試合に使うことができる」と話し、前を向いていました。
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【解説】“流れ変えた大黒柱” DeNA 東克樹
本拠地で2連敗を喫し重苦しい雰囲気となった敵地での第3戦に「流れを変える」と意気込んで先発した東克樹投手。左足の肉離れから復帰登板となった左腕は万全ではない中でも、そのことばどおり、一度も相手にリードを許さず7回1失点と、嫌な流れを振り払う気迫のピッチングでチームを初勝利に導きました。
今月12日に行われたファーストステージの阪神との第1戦で左足を痛め、翌日に出場選手登録を抹消された東投手は日本シリーズでの登板を見据えて治療に専念しました。巨人とのファイナルステージでは東京ドームでリハビリと治療をしながら連日、ロッカールームで投げられないもどかしさを感じながらも仲間を応援し、試合が終わってから帰宅の途についていました。そして、勝ち進んだ日本シリーズ、DeNAは第1戦のジャクソン投手が5回途中2失点、第2戦は大貫投手が3回途中5失点と、いずれも先発投手が試合を作れず後手に回り連敗を喫しました。
東投手は第3戦の先発に向けて「投げることは問題ない。勝ち進んでくれてまた登板できることに感謝している。2連敗という中で流れを変えるピッチングをしたい」と投手陣の柱としての責任感をにじませていました。1点リードの1回にこそ近藤選手にタイムリーツーベースを打たれ同点に追いつかれましたが、その後は徐々に本領を発揮。チェンジアップやスライダーをコーナーに丁寧に集める打たせて取るピッチングでソフトバンクの強力打線を相手に毎回ヒットを打たれながらも「次のバッターを抑えればいい」と平常心で要所を締めました。
また、軸足となる左足への負担を少しでも減らそうと右足をあまり上げず、クイックモーションのように投げる工夫を凝らしたほか、投球動作に入るときに観客が口笛を吹く行為に対してはやめてもらうよう主審にみずから訴え、失投につながるわずかなリスクも排除してアウトを積み重ねていきました。万全ではない中、7回を投げて1失点で、ヒット10本を許したものの与えたフォアボールはゼロ。むだなランナーを出さない抜群のコントロールで決定打を封じ、このシリーズで初めて相手に一度もリードを許さず試合を優位に進めました。「足がちぎれてもいい」とまで話した強い覚悟で臨み、敵地でソフトバンクの日本シリーズの連勝記録を「14」で止めた東投手。まさに試合前に口にした「流れを変える」ピッチングを体現してチームに勢いをもたらしました。