巨人が11日の日本ハム戦(札幌ドーム)を延長10回、2―1で制して3連勝を飾った。だが注目された“160キロ右腕”大谷翔平(19)との対決は、1点を奪うのが精一杯。重量打線にひるむことなく真っ向勝負を挑んできた大谷を、巨人ベンチはどんな目で見ていたのか。
初回から見応え十分の対決だった。大谷は1番の坂本に初球から157キロ。3番・アンダーソンに対しては自己最速の160キロを投げ込んできた。
普段は“個人主義”の巨人打線はこの日、珍しく狙いを統一。「低めの直球一本」に絞って臨んだ。
2回はそれが奏功し、阿部が一死から低めの159キロを中前にはじき返し、亀井も同じく158キロの低めをジャストミート。右中間を破る三塁打で先制点を奪った。
しかし大谷もさすがで、緩いカーブを取り入れた3回以降、戸惑った打線は狙いが散漫になって沈黙。大谷が7回一死に足がつり、アクシデントで降板するまで4安打に抑え込まれた。
試合は延長10回、片岡の勝ち越し打でものにしたが、試合後の原監督は大谷攻略に苦しんだ打線に向けて「対応という言葉を使うなら、もう少し結果を出さないと」と渋い顔。
大谷に対しては「素晴らしい投手。先発して、7番の打席に入るのも彼ならでは。素晴らしい野球人」と同じ言葉を繰り返してたたえた。
そんな大谷について巨人スカウトは、こんな本音を漏らした。「ウチに入らなくて彼には良かったんでしょうね」
大谷の日本ハム入団が決まった2012年のドラフトでは、巨人の1位は菅野と早々に決まっていた。そのため争奪戦に参加することはなかったが、スカウト陣の評価は投手としても野手としても最上級の「特A」だった。「もし巨人に入団していれば、野手一本で起用することを推したはずです。彼は、やはり『毎日見たい選手』ですから。坂本を三塁にコンバートし、大型遊撃手として育ってもらいたいと考えたことはあります」(前出のスカウト)
とはいえ、大谷は現在、投手としても非凡な才能を見せつけており、巨人ナインは「160キロを投げる投手は、そういない。投げても一流。二刀流は正解」と口を揃えている。過去にキューバで、あの“171キロ左腕”チャプマン(レッズ)と対戦したアンダーソンも「(大谷は)動物のようだった」と舌を巻いた。
前出のスカウトも「プロに入ってからの彼は、打者としても捨て難いものを見せています。(ドラフトは)タイミングですが、二刀流を認めてもらえる監督の下でやれたことは良かった。大きく育ってほしいです」
賛否両論あった“二刀流”だが、この日の投げっぷりは球界の盟主も感服させたということか。
堀江祥天