プロ野球のクライマックスシリーズはファイナルステージが今月16日から始まります。
セ・リーグは、4年ぶりのリーグ優勝を果たした巨人とレギュラーシーズン3位からファーストステージで勝ち上がってきたDeNAが対戦します。
担当記者がクライマックスシリーズでカギを握るとみている注目選手を紹介するシリーズ「CSのキーマン」。
巨人でカギを握るのは今シーズン15勝3敗の活躍でチームをリーグ優勝に導いた菅野智之投手。昨シーズンの不振から見事に復活を果たした大黒柱が勝負の短期決戦に臨みます。(取材:スポーツニュース部 巨人担当 小林達記記者)
これぞ菅野智之 復活の今シーズン
(写真)9月28日の広島戦で15勝目を挙げた菅野投手
菅野投手は今シーズン、去年から見違えるような姿を見せました。
昨シーズンは右ひじのけがの影響もありプロに入って最も少ない4勝と苦しみましたが、今シーズンは15勝をあげ4年ぶり4回目となる最多勝のタイトルを獲得。勝率8割3分3厘で4年ぶり2回目の最高勝率にも輝きました。
(菅野智之投手) 「(自己採点は)去年は20点ぐらい。ことしは120点です。1年間通じてパフォーマンスがずっと安定していました。いままでいろんなタイトルを取ってきましたが、そういうシーズンでもやっぱり調子の波がある。ことしはほとんど波がなかったです」
ピッチングフォームを見直しストレートに威力
復活の要因はなにか。そのひとつに挙げたのがピッチングフォームの変更です。そのポイントをわかりやすく説明してくれました。
(菅野智之投手) 「去年夏ぐらいからもうちょっと“上から叩く”イメージをつけようということで、実際にリリースポイントが10センチ、15センチぐらい上に上がった。それをキャンプぐらいからずっと意識してやってきて無意識にできるようになった。それが固まってきたというのが一番大きい」
(写真)2月のキャンプでの投球練習
昨シーズンから久保康生巡回投手コーチとフォームの見直しに着手した菅野投手。体重移動などを見つめ直し、これまでやや横振りになっていたフォームを、ボールを「上から叩く、潰す」イメージにモデルチェンジ。これによりリリースポイントがこれまでよりも高くなりました。菅野投手が「スピードもキレも戻った感覚がある」と話すように、去年と比べると、力強く角度のあるストレートで相手を押し込む場面が増えました。
それはデータでも証明されていて、去年打ち込まれた右バッターに対しては復活したストレートが特に効果的でした。
【対右打者 ストレートの被打率】
2023年 3割5分9厘
2024年 2割1分7厘
相乗効果で成長したフォーク
フォームを変えたことである変化球にも好影響が出ました。
それが縦に鋭く落ちるフォークボールです。
リリースポイントが上がったことによりボールに角度がつき、縦の変化がより効果を発揮しやすくなったのです。今シーズンは6月下旬から握り方を人さし指だけ縫い目にかける形に変更。そこに引っかけながら投げるイメージがうまくはまりボールのキレが増しました。
きっかけつかんだDeNA戦
菅野投手はフォークに大きな手応えをつかんだ試合を鮮明に覚えていました。
7月14日のDeNA戦、すでにある程度の感覚をつかんだ中で臨んだ試合でした。1回に4点を失う苦しいピッチングでしたが、5回に投げた1球で自身のイメージと感覚が完全に一致したといいます。
(菅野智之投手) 「オースティン選手からフォークで三振取れたんですけど、その三振でフォークを使えるようになったなと。『これでもう大丈夫だ』ってなりましたね」
セ・リーグ首位打者に輝いたオースティン選手から奪った三振。
これで自信をつけた菅野投手は、2週間後のDeNA戦で完封。つかんだ感覚を揺るぎないものにしました。実際、コツをつかんだ試合以降フォークの被打率は大幅に改善しました。
(写真)7月28日のDeNA戦で完封勝利
【フォークの被打率】
開幕~7/7 2割4分1厘
7/14~9/28 1割3分9厘
(菅野智之投手) 「上から叩いた方がやっぱり縦の変化量も増えますし、そこら辺が改善された点だと思います。いままでフォークボールとか縦の落ちる変化球というのはすごく苦手だったんですけど、ことしフォークに関しては一番軸になるボールだと思っています。完璧につかめた感じがします」
【DeNAの警戒選手は?】
シーズンで手応えをつかんで迎えるクライマックスシリーズ。
対するDeNAは、打率、得点ともにリーグトップの強力打線が持ち味で、ファーストステージでも2試合連続のふた桁安打で阪神に2連勝と勢いに乗っています。
菅野投手が警戒する選手に挙げたのは、1番バッターの梶原昂希選手です。
(写真)DeNA 梶原昂希選手
(菅野智之投手) 「久しぶりにいいバッター出てきたなって思いました。足も速いし、長打力もある。何よりも対応力、バットに当てるのも上手だし、いいバッターだなって思いますね」
今シーズンの対戦成績は、10打数5安打で打率5割と打たれている菅野投手。対策について聞くとこう答えてくれました。
(菅野智之投手) 「あまり手の内は言いたくないですけど、初球からバンバン振ってくるバッターなので、初球の入りを気をつけるのは必須条件だと思います」
ファーストステージの阪神戦でも甘い球を積極的に捉えるバッティングが目立ったDeNA打線。ここを菅野投手がどう抑えていくかがひとつのポイントになりそうです。
過去にはノーヒットノーランを達成したクライマックスシリーズ
(写真)2018年 ヤクルト戦でノーヒットノーラン
2018年にはクライマックスシリーズ史上初のノーヒットノーランを達成するなど、短期決戦で強さを発揮する菅野投手。「勝てる自信はある」と力強く語る一方、あくまで自然体で臨むと明かしました。
(菅野智之投手) 「ピッチャーは、レギュラーシーズンとやることは変わらないんです。僕が気をつけていることは、先頭バッターを出さない、ストライク先行、フォアボールを出さない、無駄な進塁をさせない、これぐらい。それってどんな試合でもやることなので。体もリフレッシュしてすごく状態はいいので、気持ちをいかにピークに持っていくかというのが大事だと思います」
今シーズン終了後の大リーグ挑戦も表明して注目度が高まるなか、どんなピッチングを見せるのか、目が離せません。