井上尚弥選手が5月4日にラスベガスのTモバイルアリーナで行われたWBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチでラモン・カルデナス選手に対し、8ラウンド45秒でTKO勝ちを収め、見事に4団体統一王者としての防衛を果たしました。しかし、この試合では予想外の展開が待ち受けていました。井上選手は第2ラウンド終了間際に左フックを受け、キャリアで2度目のダウンを喫しました。
この試合の中で、カルデナス選手は序盤から攻撃的な姿勢を崩さず、前に出て距離を詰めてくるタフなフィジカルを武器に攻め続けました。試合中継を担当したESPNのレポーターによると、カルデナス選手はダウンを奪った直後、セコンドに「井上は俺を崩せない」と自信満々に語ったとされています。この発言に対し、アメリカの専門メディアの記者は「少し勇敢すぎるのでは」と指摘しました。
試合が進むにつれ、井上選手は7ラウンドに逆転し、カルデナス選手をダウンさせました。カルデナス選手は井上選手の強烈なパンチを避けようと奮闘しましたが、8ラウンドに入ると連打を浴びてレフェリーが試合をストップしました。このレフェリーストップについては、元王者のスティーブン・フルトン選手が「少し早すぎたのでは」と意見を述べ、一部のメディアも同様の見解を示しています。しかし、試合映像を再度確認すると、カルデナス選手が明らかに危険な状態に陥っていることが確認され、ファンからは妥当な判断だったとの声が上がっています。
試合後、井上選手はほっとした表情を見せながらも、次のスケジュールについてはWBA世界同級暫定王者のアフマダリエフ選手との対戦が9月14日に名古屋で開催される可能性が高いと報じられています。新設されるIGアリーナは1万7000人収容の近代的な施設で、ボクシングイベントにも注目されています。
また、アフマダリエフ選手との対戦後には、フェザー級への挑戦が待ち受けているという噂もあり、年末にはサウジアラビアでWBAフェザー級王者のニック・ボール選手に挑戦する計画も浮上しています。井上選手にとって、これは5階級制覇に向けた大きな一歩となるかもしれません。
一方、元5階級制覇王者であるドネア選手は、井上選手の戦いを振り返りつつ、「もっと賢い相手に今回のような展開を許していたら、一歩遅れていたかもしれない」と厳しい意見を述べています。また、ドネア選手は井上選手のフェザー級挑戦が簡単ではなく、相手のサイズやフィジカルが強化されることを指摘し、井上選手のパワーが上の階級でも通用するかに注目しています。
このように、井上選手は次なるステップに向けて、さらなる高みを目指しています。今回のカルデナス戦は、彼にとって思いがけないダウンを含む試練であり、今後の課題を浮き彫りにしました。それでも、彼の強打とスピード、精神力は世界的にも一級品です。次のアフマダリエフ戦、そしてその先に待つフェザー級挑戦に向けて、井上選手の動向から目が離せません。