地下鉄サリン事件から30年、捜査員の命を守った「カナリア」のその後
1995年3月20日、東京の地下鉄で発生したサリン事件は、日本社会に深い傷を残しました。このテロ事件では、14人が命を奪われ、約6000人が重傷を負いました。事件から2日後、警察の捜査員たちは山梨県上式村にあるオウム真理教の施設を捜索するために派遣されました。捜査の現場で注目を集めたのは、捜査員が手にしていたカナリアでした。
当時、捜査員たちはカナリアを連れて行くことを義務付けられていました。カナリアは、かつて炭鉱労働者の安全を守るために使われていた「危険信号」としての役割を担っていました。サリンに対する反応が不明であったため、カナリアが捜査現場に同行することとなったのです。
元警視庁捜査一家の刑事、坂本和夫さんはこの任務に従事しました。捜索中は寒さと戦いながら、バスの中で寝泊まりし、カナリアのピーコと共に任務を遂行しました。ピーコは1ヶ月後に寒さから亡くなり、その後を引き継いだのがカナちゃんでした。坂本さんはカナちゃんを大切に育て、捜査の合間に仲間たちと共に生活を共にしました。
事件から30年が経過した今、坂本さんはカナちゃんとの思い出を語ります。彼は「カナリアは私たちの仲間であり、命を守るための存在でした」と述べ、当時の厳しい状況を振り返ります。カナちゃんは事件の4年後に亡くなり、坂本さんは彼女を自分の手元に置くことを決意しました。
現在、坂本さんはカナちゃんの存在を証言として残すことを考えています。「この事件が二度と起こらないことを願っています。6000人近くの人々が今も苦しんでいるという現実を忘れてはいけません」と彼は強調しました。
30年という月日が流れた今でも、地下鉄サリン事件の影響は色濃く残っています。坂本さんは、事件を風化させないためにも、カナリアの存在を大切にし、未来に向けてのメッセージを伝えていきたいと考えています。このような悲劇が二度と繰り返されないことを願う声が、今もなお響いています。