「太田(蒼生)さん…なんであんな強いんだろ」箱根駅伝ライバル校“青学大へのホンネ”…駒大・大八木総監督もかつて「約2分だと差はない」

箱根駅伝で抜群の強さを見せる青山学院大学を、他大学のライバルはどう見ているのか。「NumberWeb」の取材からかつて“茶髪サングラス”で箱根路を走ったエースから指導者になった人物や、ライバル駒澤大学の名将・大八木弘明総監督や選手たちの証言をひもとく。

“茶髪サングラス”から指導者となった徳本の青学大評

<名言1> 青学はシャチですよ。 (徳本一善/NumberWeb 2022年1月1日配信) https://number.bunshun.jp/articles/-/851447 ◇

解説◇  33年ぶりの箱根駅伝本戦出場を果たしたのは2009年。初の総合優勝は2015年。しかしそこから青山学院大学が箱根路で見せる圧倒的な強さは周知の通りだ。出場回数が50を超える伝統校が数多い中で、近年は長らく本戦出場から離れていた大学の復権、そして新興勢力の台頭などが目立つ。その潮流を作ったのは原晋監督と青学大だったのは間違いない。  そんな原監督と親交を持ち、指導者として奮闘しているのが駿河台大学の徳本一善監督である。自身は学生時代、法政大学のエースランナーとして名を上げた。特に明るい茶色やスクールカラーであるオレンジに染めた髪とサングラス姿で疾走し、忌憚のない発言をする姿勢は21世紀に入ろうとする当時でも異端に映る存在だった。その後は2011年に駿河台大学の選手兼任コーチ、翌年から監督に就任すると、就任から10年を迎えた21年10月の箱根駅伝予選会で同校初の本戦出場をつかみ取った。  そんな徳本監督が指導者として影響を受けた1人として――同じ広島県出身というよしみもあってか――原監督がおり、食事に行って刺激を受ける関係だったと22年初春のインタビューで明かしていたことがある。  その際、実力差について青学大を海の食物連鎖で圧倒的な強者にいる「シャチ」、さらにはライバルである駒澤大学も「クジラみたいなものでしょ」ともたとえているが、自分たちなりの力で、必死に挑むことをこうも表現していた。 「でも俺らイワシみたいな奴らが戦わなくちゃいけない」

往路優勝でも大八木監督が“警戒”したワケ

<名言2> 2分ぐらいだと、差はないのと同じですよ。 (大八木弘明/NumberWeb 2023年1月2日配信) https://number.bunshun.jp/articles/-/856074 ◇解説◇  ここ10年、大学駅伝界で青学大と激しい鍔迫り合いを見せてきた学校の筆頭格と言えば、駒澤大学である。  中谷圭佑、西山雄介、田澤廉、鈴木芽吹、篠原倖太朗、佐藤圭汰……と数多くの名ランナーを輩出し、ここ5年の箱根では総合優勝2回、2位2回、3位1回と安定した成績を残してきた。その中で最も会心だったのは、2023年の第99回だった。  12月に体調不良になった田澤を花の2区で起用せざるを得ない区間配置だったものの、首位・中央大やライバル青学大とほぼタイム差のない状況でタスキをつなぐ。そして中央大をかわして一度は首位に立った4区・鈴木は、青学大・太田蒼生の猛烈な追走にも粘りを見せてタイム差1秒で5区へと突入。山上りを任された山川拓馬は「ここでトップの座を渡すわけにはいかないと気合が入りました」と、2位に再浮上した中央大に30秒差、青学大には2分3秒差をつけて往路優勝を果たした。  それでも当時の監督・大八木は冒頭に取り上げたように、約2分の差を“あってないもの”として捉えていた。それは青学大の総合力を警戒、リスペクトしてのことだったのだろう。 「7区、8区、9区で相手を突き放すレースができればいいなと思います。今日の粘りをあしたの選手にも期待したいですね」  この言葉通り、駒大は6区・伊藤蒼唯の区間賞を皮切りに、10区まで全員のランナーが区間5位以内の走りを見せ、総合優勝と復路優勝も成し遂げる“パーフェクトゲーム”となった。

1年前、佐藤圭汰は「太田さん、強すぎでした」と

<名言3> 太田さん、強すぎでした。 (佐藤圭汰/NumberWeb 2024年1月3日配信) https://number.bunshun.jp/articles/-/860237 ◇解説◇  2023年の正月の歓喜から一転、1年後は駒大の選手が悔しさを味わった。篠原倖太朗が1区で区間賞を獲得し、その時点で青学大とは35秒差と好スタートを切った。藤田敦史監督が「1区から3区でリードし、4区でさらに差を広げるというプラン」と語っていた青写真が現実になりそうな気配があった。しかし……決して悪くない走りだったはずの2区の鈴木芽吹が黒田朝日に22秒差まで詰められると、さらに暗転したのが佐藤圭汰が走った3区だった。  佐藤の実力からすれば差を広げるはずが、13.9キロ地点で追走してきた太田蒼生に並ばれる。ここから太田にピタリとつかれた佐藤は心理的にも厳しい戦いを強いられた。そして……。 「ラスト2キロぐらいから足が寒さのせいか、動かなくなってしまって……。襷を1位でもらった以上、さらに突き放してやろうと思ったんですけど、難しかった」  18.22キロ地点で前に出た太田に順位をひっくり返されたのだった。佐藤のコメントは、重いものだった。 「なんで、あんな強いんだろ」

「ピクニック気分?なかった!」と原監督に言わせる総合力

そんな佐藤と駒大は、2025年の箱根路でも太田や“若乃神”こと若林宏樹らの激走の前に青学大に総合連覇を許したとはいえ――意地を見せた。7区を任された佐藤は1時間0分43秒の区間新記録で青学大と1分台差まで詰め寄り、チームも5時間20分50秒で復路優勝を果たした。  それもそのはず、1区から10区まで各走者の区間順位を見てみると……。 〈第101回箱根駅伝:駒大各走者の区間順位と記録〉 1区:帰山侑大 2位 1時間2分39秒 2区:篠原倖太朗 4位 1時間6分14秒 3区:谷中晴 6位 1時間2分5秒 4区:桑田駿介 4位 1時間1分24秒 5区:山川拓馬 4位 1時間10分55秒 6区:伊藤蒼唯 2位 57分38秒 7区:佐藤圭汰 1位 1時間0分43秒 8区:安原海晴 4位 1時間4分31秒 9区:村上響 5位 1時間9分4秒 10区:小山翔也 2位 1時間8分54秒  原監督が「ピクニック気分? いや~、なかった!」と語ったのも納得の安定感だった。 〈箱根駅伝「青山学院大連覇」特集:つづく〉

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