仙台市において、自らの子どもを亡くした遺族たちが集まり、心の傷を癒すための自助グループ「愛の会」が活動を続けています。自死による悲劇を経験した遺族たちは、共にその後悔や痛みを分かち合い、新たな命を救うために積極的に声を上げることを目指しています。
このグループの代表である田中幸子さんは、2005年に宮城県警の警察官であった長男・健一さんを34歳で自死で失いました。健一さんは、過重労働やパワハラに苦しみながらも、真面目に仕事に取り組んでいました。田中さんは、まさか自分が墓を作ることになるとは思ってもみなかったと語ります。彼女は、同じような経験を持つ人々と出会いたいという思いから、2006年に「愛の会」を立ち上げました。会の名前は、息子が着ていた警察官の制服の色から名付けられました。
「愛の会」はこれまでに7000人以上の遺族と関わりを持ち、定期的にサロンを開催しています。サロンでは、悩みや悲しみを分かち合うだけでなく、法律相談や社会的支援についての情報交換も行われています。参加者は、失った子どもを思い出しながら、共に支え合うことで新たな希望を見出しています。
渡り町に住むある男性は、2019年に中学2年生の息子を自死で失いました。息子は学校でのいじめに苦しみ、カウンセリングを求めたものの、学校側は適切な対応をしませんでした。男性は、自死の原因を究明するために第三者委員会の設置を求めましたが、最初の調査では学校の不適切な指導やいじめがあったことは認められたものの、それが自死の直接の原因とはされませんでした。しかし、愛の会を通じて田中さんからのアドバイスを受け、再度調査を求める決意を固めました。
男性は、調査を通じて自分の息子が何も悪いことをしていなかったと確信し、心の整理をつけることができたと話します。愛の会は、遺族同士の支え合いを通じて、社会に対する声を発信し、自死を減らすための活動を続けています。
田中さんは、「遺族の声が学校や社会に反映されることで、具体的な対策が立てられる」と強調し、自死を防ぐための取り組みの重要性を訴えています。今後も「愛の会」は、遺族の心の整理や声を社会に届ける活動を続け、悲しみを共有する場を提供していくことでしょう。