大相撲・式秀部屋脱走事件の衝撃の全貌
2020年8月、大相撲界に衝撃が走った。茨城県竜ヶ崎市に拠点を置く式秀部屋から、力士9人が深夜に集団脱走するという前代未聞の事件が発生した。この出来事は「力士9人集団脱走」として各メディアに取り上げられ、相撲ファンのみならず一般の人々からも大きな注目を集めた。
力士たちがなぜ自らの将来をかけて部屋を飛び出す危険な選択をしたのか、その背景には何があったのだろうか。脱走は、彼らの苦しい現状への切実な訴えであり、最後の手段だったといえる。脱走した力士たちは、カラオケボックスに逃げ込み、日本相撲協会に直接SOSの電話をかけた。「このままでは相撲を続けられない。助けてください」という彼らの訴えに、協会は緊急対応を行い、力士たちはその日のうちに保護された。
相撲界において、力士が自らの部屋の問題を外部に訴えることは極めて異例であり、彼らがそこまでの行動を取るに至った理由は何か。調査の結果、女将による過剰な指導や管理が明らかになった。暴力行為は認められなかったものの、コンプライアンス委員会からは厳重注意が下され、式秀親方は責任を持って弟子を指導することを約束した。しかし、この問題は単なる指導の行き過ぎにとどまらなかった。
式秀部屋は1992年に設立され、師匠の式秀親方は現役時代に北桜として知られた力士である。部屋の規模は中程度であったが、関取を長年輩出できず、多くの弟子が序の口や十両にとどまっていた。特に、師匠の長期不在により、女将が実質的に部屋の運営を担うことになり、その厳しさはエスカレートしていく。
女将は、弟子たちに対して独自の厳しいルールを課し、生活の細部にわたる管理を行っていた。グループラインを通じた長文メッセージや、私物の検査、さらには食事の内容にまで干渉する状況が続いていた。このような緊張した環境に、力士たちはストレスを抱え、脱走に至ったとされる。
脱走事件は、相撲界全体に波紋を広げ、メディアは連日報道を行った。週刊誌では、女将の過剰指導や不適切な管理の具体例が取り上げられ、批判の声が高まった。特に、弟子たちが食べる食事の質が悪く、栄養が不足していたことは大きな問題として指摘された。
日本相撲協会は、脱走後に迅速に調査を開始し、力士たちの環境改善を図るよう指導した。結果として、力士たちは再び部屋に戻ることとなったが、依然として部屋には課題が残っている。今回の事件は、相撲界におけるパワハラの問題を浮き彫りにし、今後の改善策が求められることとなった。
この事件を受けて、他の相撲部屋においても同様の問題がないか注目が集まっており、相撲界全体への改革が期待される。力士たちが勇気を持って声を上げたことは、彼らの未来にとって重要な一歩となるだろう。
式秀部屋は、今回の試練を乗り越え、師匠と弟子が一体となって強い力士を育て上げることができる日が来ることを、相撲ファンは期待している。相撲界全体が今回得た教訓を生かし、より良い環境で国技である相撲に打ち込めるよう改革が進むことを望まれる。