東京・高田馬場の路上で発生した刺殺事件。22歳の若さで凶刃に倒れたのは、動画配信の世界では「最上あい」の名でライバー(配信者)として知られた女性だった。容疑者から250万円もの借金をしていた彼女が、最悪の悲劇に至ったトラブルの原点は、故郷でのクラブ勤務時代にあった。 【写真を見る】満面の笑顔を見せる最上あいさん 事件前日の様子 ***
高野健一容疑者(42)が動画配信サービス「ふわっち」で最上さんを知ったのは2021年の12月。やがて連絡を取り合う間柄となり、翌年8月、初対面を果たす。場所は、最上さんが本名・佐藤愛里と同じ〈あいり〉の源氏名で勤める山形市内のクラブだった。 「彼女が入店したのは22年の夏ごろでした」 そう振り返るのは、店の関係者である。 高野容疑者が来訪するのは、最上さんが入店して間もない頃のこと。 「数回やって来た高野さんのことは、わざわざ栃木県から来ているというので、彼女に何者なのか聞いたことがあります。すると“私にガチ恋の人”と言っていました。私も何度か見かけたことがありますが、高野さんはすごくおとなしくて真面目そうな人、という印象。店では、彼女は高野さんにフレンドリーに接していて、借金の話なんて聞いたことありませんでした」(同)
わずか2カ月で250万円ほど借金
しかし、このクラブでの対面が、二人の人生を決定的に狂わせていく。 高野容疑者が最上さんに対して提起した貸金等返還請求訴訟の資料によると、クラブ初訪問の約2週間後、最上さんから高野容疑者へこんなLINEが届いた。 〈申し訳ないんだけどさ、昨日日雇いバイト行った先に財布忘れちゃってまじ手持ちない状態だからちょいお金貸してほしいんよね〉 高野容疑者は〈4万でいいかな〉と応じ、すぐに指定された口座に送金した。 数日後、またもや窮状を訴えられた高野容疑者は5万円を送金……と、最上さんはさまざまな口実を設けて、9月だけで10回も借金を申し込んでいた。 10月に入ると、最上さんの要求はエスカレートする。“姉の売掛金を支払えと迫られている”などと主張するのだ。高野容疑者はなけなしの36万円を送金する。 さらに翌月、最上さんは高野容疑者に、〈一括でやり直したいから50以上は絶対借りたいの〉〈しんどい状況からやり直したい〉と、どうにか金を工面してほしいと懇願。高野容疑者は〈オレ仕事してないから借金はできないかも〉〈消費者金融とか銀行カードローンも見たけど無理っぽいよ〉と及び腰だが、〈割とガチでおねがいしてるんだよねん〉という最上さんは、驚くほど執拗(しつよう)にサラ金からの借り方を指南する。結局、高野容疑者は2社から借り入れ、95万円を最上さんに送金した。 こうして最上さんは、わずか2カ月の間に250万円ほどの借金 を作ってしまったのである。
「子どもを託児所に預けたまま彼女が飲みに行ってしまい……」
彼女の金の使い方は、かなり無軌道なものだったという。 「山形駅前の夜の店のキャッチやボーイの間では、彼女は金遣いが荒いと有名でした。ボーイズバーでお気に入りの男性スタッフのためにシャンパンを入れる、といった“貢ぎ癖”があったようです。それも、一人だけではなく複数人のお気に入りがいた。よくお金が続くなと思っていました」(前出のクラブ関係者) 奔放な夜遊びを繰り返す彼女は当時、母子支援施設に身を寄せるシングルマザーだった。勤務の際には、託児所に子どもを預けていたという。 ところが、 「バックヤードで、“子どもを児童相談所に連れて行かれた”と、数日にわたって泣いていることがありました。それは、子どもを託児所に預けたまま彼女が飲みに行ってしまい、託児所から店に連絡が入るということが度々あったからだと思います。子持ちの女性がそれなりにいる店なので、彼女の飲み歩きを母親としてよくないことだと眉をひそめる従業員も少なくありませんでした」(同) 3月19日発売の「週刊新潮」では、彼女とコラボ配信していた人物の話などを交えて事件の深層に迫っている。
「週刊新潮」2025年3月27日号 掲載