群馬県前橋市にある赤木神社で、1998年5月3日、静かのり子さん(当時48歳)が家族の目の前から突然姿を消した。彼女は、ゴールデンウィークの雨の日、家族と共に訪れた神社で、わずか6分の間に行方不明になった。この事件は「平成の神隠し」として広く知られるようになり、26年以上経った今もその行方は不明である。
のり子さんは千葉県白石在住の主婦で、平均的な体格だったが、右耳に障害を抱え、普段は補聴器を使用していた。特に雨の日には目まいを起こすことがあり、立ち上がることさえ困難になることもあった。事件当日、彼女は夫や娘、孫と共に群馬県の夫の実家を訪れており、午後11時30分頃、赤木神社に到着した。
神社へ向かう途中、のり子さんはお賽銭として101円を持ち、家族に「お再戦を上げてくる」と告げて一人で車から降りた。しかし、彼女が車を降りてからわずか2分後、娘が林道で母親らしき人物を見かけた後、再び目を向けるとその人物はもういなかったという。その後、家族が探し始めたが、1時30分頃には警察に失踪届を提出する事態となり、以降、約80人の捜索隊が現場付近を捜索したが、決定的な手がかりは見つからなかった。
警察は事件性を完全に排除できないと判断し、捜索を続けたものの、目撃情報はわずか20件程度と少なく、特に神社周辺での目撃者が極めて少なかったことが不自然であると指摘されている。また、失踪から7ヶ月後、赤木神社にいた参拝客から提供されたホームビデオには、赤い傘を差した女性が映っていたが、家族はその人物がのり子さんでないと判断した。
この失踪事件については多くの仮説が存在する。事故による自発的な失踪、第三者による誘拐、さらには「神隠し」という古い伝承に基づく可能性も考えられている。特に、のり子さんが目まいの発作に襲われていた場合、方向感覚を失い、山中に迷い込んでしまった可能性があると指摘されている。
この事件の真相は未だ明らかになっておらず、家族は2008年に失踪宣告の手続きを行い、法的に亡くなったと見なされたが、警察は依然として情報提供を呼びかける活動を続けている。のり子さんの失踪は今も多くの人々に記憶されており、その背後にある謎は深まる一方である。
いずれにせよ、静かのり子さんとその家族に平穏が訪れることを願うばかりである。