奈良県で深刻な状況が発生している。観光客によるゴミの不適切な処理が、奈良公園のシンボルである鹿たちの命を脅かしているのだ。最近、死亡した鹿の胃の中から3.2キロメートルにも及ぶビニール袋の塊が発見され、鹿たちは食べ物を消化できずに衰弱し、命を落としている。このような状況は一件の例にとどまらず、奈良公園全体で多くの鹿が人間のゴミによって苦しんでいる。
この問題の背景には、外国人観光客、特に中国からの観光客による不適切な行動がある。SNSを通じて情報を発信している奈良市の住民によると、観光客が鹿に無理やり食べ物を与えたり、そのゴミを地面に捨てて立ち去る行動が常態化しているという。鹿がビニール袋を食べてしまう原因は、観光客が捨てた食べ物付きのゴミにある。これは野生動物に対する虐待行為と同等であり、深刻な問題である。
さらに、奈良県は観光収入を優先し、マナー教育や罰則強化の仕組みを整備してこなかった。2020年には、奈良県の職員が中国の旅行業者に対して鹿への餌の与え方を紹介するなど、観光促進に力を入れていた。しかし、観光客の増加に伴い、鹿とのトラブルも増加していた。2019年には奈良県を訪れた外国人観光客は349万人に達し、7年前の10倍以上に膨れ上がったが、その影響に対する対策は不十分だった。
奈良公園の鹿は、元々神の使いとされ保護対象であるが、現在では観光客の娯楽の対象とされ、その命が軽視されているのが現実である。観光収入を優先した結果、動物福祉が後回しにされ、鹿たちの苦しみが続いている。この問題に対するネット上の反応も厳しく、観光客の行動に対する非難が相次いでいる。
奈良県の観光政策に対する批判が高まる中、今後の対策が求められている。観光収入と動物福祉の両立を図るためには、観光客へのマナー教育や罰則の強化が不可欠である。鹿たちの命を守るために、地域社会全体での取り組みが急務となっている。